2016年5月17日火曜日

ロシア株に見るロシア経済と原油価格指標




ロシアは、「1日あたりの原油生産量」がアメリカ・サウジアラビアと並んで世界で最も多い国です。さらに、原油価格とロシアの経済は極めて高い相関性があるとも言われています。(例:原油安⇨ロシア経済不調)

そこで今回は、世界的な原油指標(WTI原油・北海ブレント原油)とロシアの株価指数RTS指数を比較し、どのような動きになっているのかまとめてみました。



WTI原油・北海ブレント原油について

WTI原油・北海ブレント原油についてのざっくりとした説明は以下です。
※原油は、石油に含まれるもので、原油を気化することでガソリン・軽油・灯油・重油が醸成されます。これらをまとめて、石油(原油・ガソリン・軽油・灯油・重油)と言います。気化する温度については、ガソリン⇨35〜230度、軽油⇨230〜350度、重油⇨350度以上、という感じです。
※原油の単位は『バレル』といい、1バレル=約160リットルです。


WTI原油・・・北米の原油価格の指標。ニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されている。

北海ブレント原油・・・欧州の原油価格の指標。インターコンチネンタル取引所で取引されている。

これに、ドバイ原油を含めて消費地ごとに世界3大市場が形成されています。この中でWTI・北海ブレントについては特に取引量が多く流動性が高いことから、これらを中心に進めたいと思います。



ロシアの株価指数

任意の国の経済状況をざっくり把握するときには、その国の主要株価指数を見るのが手っ取り早いです。ロシアについては、RTS指数・MICEX指数という2つの株価指数があり、世界ではそれらがロシアの代表的な株価指標とみなされています。

RTS指数・・・モスクワ取引所に上場する大型銘柄(約50銘柄)の時価総額の平均(時価総額加重平均)で割り出される指数。構成銘柄は、3か月ごとに見直されます。※ドル建て

MICEX指数・・・RTS指数をルーブル建てしたもの。※2011年に、モスクワ銀行間通貨取引所(MICEX)がロシア取引システム(RTS)を買収し、2012年「モスクワ証券取引所」に改称されました。


今回は、ドル建てということもあるのでRTS指数を使用します。
そして以下は、RTS指数の構成銘柄・業種・構成比率です。



構成銘柄業種
1
ガスプロム (GAZP) 
石油・ガス
2
ロシア貯蓄銀行 (RUALR、SBER、SBERP)
銀行
3
ルクオイル (LKOH) 
石油・ガス
4
マグニト (MGNT)
小売
5
ノヴァテク (NVTK)
石油・ガス
6
 ノリリスク・ニッケル (GMKN) 
鉱業
7
VTB銀行 (VTBR) 
銀行
8
ロスネフチ (ROSN) 
石油・ガス
9
 スルグトネフテガス (SNGS、SNGSP) 
石油・ガス
10
トランスネフチ (TRNFP)
石油・ガス
11
セヴェルスターリ (CHMF)
鉄鋼
12
マグニトゴルスク・アイアン&
スチール・ワークス (MAGN)
鉄鋼
13
ノボリペツク (NLMK)
鉄鋼
14
 TMK (TRMK)
鉄鋼
15
VSMPOアヴィスマ (VSMO)
鉄鋼
16
 E.ON・ロシア (EONR)
電気
17
フェデラル・グリッド・カンパニー・
ユニファイド (FEES) 
電気
18
ルスギドロ (HYDR) 
電気
19
インターラオ (IRAO)
電気
20
ロセッティ (RSTI)
電気
21
モバイル・テレシステムズ (MTSS) 
情報・通信
22
 ロステレコム (RTKM、RTKMP) 
情報・通信
23
ヤンデックス (YNDX)
情報・通信
24
 メガフォン (MFON) 
情報・通信
25
アクロン (AKRN) 
化学
26
フォスアグロ (PHOR) 
化学
27
ウラルカリー (URKA) 
化学
28
ニシネカムスクネフティケム (NKNC) 
化学
29
ポリメタル・インターナショナル (POLY) 
鉱業
30
アルロサ (ALRS)
鉱業
31
 メケル (MTLR) 
鉱業
32
 バシネフチ (BANE、BANEP) 
石油・ガス
33
タトネフチ (TATN、TATNP)
石油・ガス
34
Mビデオ (MVID) 
小売
35
 DIXYグループ (DIXY)
小売
36
LSRグループ (LSRG) 
不動産
37
PIKグループ (PIKK) 
不動産
38
AFKシステマ (AFKS) 
コングロマリット
39
チェルキゾボ (GCHE)
食料品
40
ファームスタンダード (PHST) 
医薬
41
モスクワ証券取引所 (MOEX) 
金融
42
アエロフロート・ロシア航空 (AFLT)
空運
43
モストットレスト (MSTT)
建設
44
 ロスアグロ (AGRO)
農林

(石油・ガスを、鉄鋼を、鉱業をオレンジで表示しています。)




構成銘柄上位には、『石油・ガス』や『鉱業』など天然資源に関係する銘柄が並びます。構成比率を見ても、天然資源価格で容易に左右する指数であることがわかりますね。(ロシアは、原油の生産量は多いが消費量はそこまで多くありません。よって、ロシアの経済が原油価格に影響するというよりも世界的な原油需給の影響がロシアの経済に影響するという側面が強いです。)



長期チャート(1980〜2016)

ソビエト社会主義共和国連邦時代から現在のロシア連邦に至るまでの最高指導者、および各指数の節目となる時期の出来事を長期チャートでまとめてみました。

1980/1〜1997/12



1998/1〜2016/4



2000年(プーチン氏1期目)からの伸び、翻ってリーマンショックとクリミア侵攻後の下落がすごいですよね…。

2000年以降の経済成長は、原油高による恩恵が大きいと思います。しかし、プーチン氏は「強いロシア」の再建を目標とし、フラット・タックス制の導入・法人税や消費税の引き下げなどの税制改革を行い、ロシア経済は活性化しました。
今なお衰えないプーチン氏の人気には、財政危機だったエリツィン時代には戻りたくないという民意やこれからの期待感が表れているのだと思います。







おまけ(ガソリン小売価格)

原油価格とロシア経済の関係をグラフにしてみましたが、おそらくほとんどの方の実生活に何の関係もない話だったと思います。
そこで、石油情報センター1987年以降のガソリン小売価格を長期チャートにしてみました。ガソリンスタンドなどで給油する際に、レギュラーが上がっていたら「ロシアが調子いいんだな〜」とこの記事を思い出してください。(ガソリンは、原油ほど価格が上下しません。これは固定で1リットルあたり55円の税金がかかっていたり、為替差があるためです。








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